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アリクィド

9.11以降の映画

ベトナム、冷戦、湾岸戦争。
常に準備される水面下での武力投入。
先進国軍部からテロ組織への安価な武器の販売。
石油会社と政治家の癒着。
ありとあらゆる上層という妄想の恥部。

9.11以降、世界は新しい開きに向かわざるを得なくなったといえる。
ジャーナリズム的、あるいはドキュメンタリーとしての映像が
一通り落ち着きを見せ、アイロニーではクリアにならない何かに
気付き始める。
真実は何か、ではなく、真実は何処にあるか、として展開すべき表現。
情報を何度も淘汰する表現。
彼等が見つめる世界とは、やはり悲劇の侵攻なのか。
あるいは、より強靱な逃走線なのか。

「ランド・オブ・プレンティー」  監督ヴィム・ヴェンダース/2004年米、独

 いわゆる下部構造を通してあまりにも拡張してしまった、アメリカの悲劇を
 描き出す。
 妄想的自己防衛が一戦争国家の最重要フォルダと化し、それとは
 対極を成すように喪失した自我が恐怖におびえ続ける。
 ベトナム、湾岸、イラクと国家に人生を奪われるリアリティー。
 少女の愛は何処までも救済となり、映画はフィルムに解け込んでゆく。
 それでも星条旗は風になびき、人々は流入する。
 グランド・ゼロ、「ここには、何もない」

「ブロークン フラワーズ」  監督ジム、ジャームッシュ/2006年米
 
 一見、9.11以降の流れとは全く関係ないように見えるが、痛烈な問題作。
 キーワードはおそらく「ロスト」ということになるだろう。
 アメリカ的なもの、その全てはもうブロークン・フラワーズであり、
 どうしようもなく「ロスト」している。
 放置された問題の岐路に立ちながらも、やはりそれを投げ出すのだろうか。
 ピンク、コンピューター、家族、息子。
 不動産、飛行機、バイク、レンタカー。
 飽和、余剰、ガレージセール。
 いつもは淡々とユーモアで色調を捉えるジャームッシュが、巨大な危機感を
 前面に打ち出した名作。

「アワーミュージック」  監督ジャン・リュック・ゴダール 2004年仏/瑞

 70年代以降、映画に政治やジャーナリズムを映り込ませてきた、
 勇気の人、ジャン・リュックのあまりにも美しい作品。
 この作品はおそらく以前にも紹介したので、今回はインタビューから
 ゴダールの言葉を紹介したい。
 ・・・マイケル・ムーアの作品「ボウリング・フォー・コロンバイン」と
   ワイズマンの偉大な作品「Welfere」を比較すれば、
   (映画には)二つの世界がある事がおわかりになるでしょう。
   ムーアの作品はブッシュを助けていると思います。
   自分では気づかない間違った方法で助けているのです。
   ブッシュは彼が思うほど愚かではありません。
   または愚かすぎて私たちが変える事が出来ないのかもしれません。
   もう一人(ムーア)は中途半端に頭が良いので、
   映像とテキストの違いが分からないのです。

# by asdfghgen | 2007-07-30 16:01